おいらがこの家に来て最初の2ヶ月は『悪魔』だった。
何でもかじる。
人も噛む。
吠えるし、飛びつくし、誰の言うことも聞かない。
みんなが母ちゃんに言ったっけ。
「大丈夫?こんな子?SPCAに返したら?」
ほらね、どうせまたおいらは別のところに連れて行かれるんだろ?
誰もおいらのことなんか好きじゃないんだ。
母ちゃんが言った。
「生まれてからこんな短い間に、この子は何人の人間に見捨てられるの?
そんなことできないよ。」
綺麗事言ってられるのも今だけさ。
お前だってすぐにおいらを見捨てるよ。
「大好きだよ。」
「いい子だよ。」
「お前のことを信じてるよ。」
けっ!知るかよ!
おいらの人生の中で、そんな言葉が本当だったことなんか1度もないぞ!
3ヶ月を過ぎると、『悪魔』を卒業して『ケダモノ』になった。
甘えたいんだけど、甘え方がわからなくて
大きな体で、噛んで、飛びついて、押し倒す。
父ちゃんと母ちゃんに毎日叱られた。
叱られた後、必ずハグしてもらって、少しずつ甘え方を覚えていったんだけど
父ちゃんと母ちゃん以外の人はみんなおいらを怖がった。
やっぱりみんなが母ちゃんに言ったっけ。
「大丈夫?後悔してるんじゃない?」
母ちゃんが言った。
「子供が言うことを聞かない度に、あなたたちは産んだことを後悔するの?」
4ヶ月が経った時、おいらは病気した。
このまま死ぬんだって覚悟した。
どこで死にたいかって考えた時
おいらの頭に浮かんだのは父ちゃんと母ちゃんの膝だった。
母ちゃんが病院に連れて行ってくれた。
おいらは見捨てられなかったんだ。
病院から帰って来たら、みんなが喜んでくれた。
みんなの嬉しそうな顔を見て、おいらは初めて自分が生きている世界を意識した。
人間はおいらの敵じゃない。
おいらは思ったよりも、ずっと暖かい世界に生きているんだって知ったんだ。
その瞬間、『ケダモノ』はやめて『やんちゃな犬』になった。
みんながおいらを見て言ったっけ。
「へー、変われば変わるもんだねー。
おとなしいと、この子は結構可愛いね。」
母ちゃんが言った。
「まだまだ、これからよ。」
この家に来て6ヶ月の時、母ちゃんが病気した。
母ちゃんの顔が見られなくなって、おいらは気が狂うかと思った。
父ちゃんがいいこと教えてくれた。
「お前がいい子にしてたら、母ちゃんは早く治るよ。」
母ちゃんの顔が見たくて
そのためなら、『いい子』になってもいいと思った。
おいらが幸せだと感じる世界には、いつも父ちゃんと母ちゃんがいて
父ちゃんと母ちゃんの間においらがすっぽり納まる。
おいらは父ちゃんと母ちゃんの子供で、この家に必要な存在なんだ。
完璧な安心感と幸福感に包まれて
おいらは今日もモリモリ飯を食う。
この家に来て、もうすぐ8ヶ月。
みんなが口を揃えて言う。
「いい犬だねぇ。」
母ちゃんが言う。
「はい、うちの子ですから!」
この女、ホント馬鹿だろ?
そこは「いえ、それほどでも。」って言うのが日本人だろ?
古代中国の皇帝が献上された鹿を馬だと言った。
「いえ、それは鹿です。」と言った家臣は殺された。
馬鹿という言葉はこれに由来するらしい。
本当のことを言う奴は馬鹿ってことか。
みんなが『悪魔』だと思った犬を
母ちゃんだけが『いい子』だって言い続けた。
みんなにもおいらにも言い続けて8ヶ月経ったら
『悪魔』は本当に『いい子』になっちゃった。
おいらの母ちゃんはきっと究極のプレミアム馬鹿なんだろう。
けど、母ちゃんの嬉しそうな顔を見てると
「馬鹿ほど幸せ」っていうのは本当なんだなって思う。
よかったな、母ちゃん。
このプレミアム親馬鹿母ちゃんのお陰で
おいらは今日 満 1 歳 になった!
母ちゃん、おいらに感謝しろよ!
がはははは!
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タロー一歳おめでとう!
返信削除お父さんとお母さんの言う事を沢山聞いて素敵な家族になって下さいヽ(´ー` )ノ
私は新しい整体の試験合格したよ!
ちょめ
ちょめさん!
返信削除ちょめさんの整体のお陰で、母ちゃんの腕が治ってきたよ!ちょめさんも忍者だったんだね。これからもおいらのことを見守ってね。