2016年2月29日月曜日

誤飲


「え゛ええええーーーーぇ!」

なんだよ、母ちゃん、うるさいなー。

「うるさいなーじゃないよ!
なにこれ?」



見りゃ、わかるじゃん。
俺様の苦労の末の傑作よ!

「アンタ、残りの部分はどうしたの?」

んーーー、よくわかんない。
かじかじしてたら、なくなっちゃったんだよなー。

因みに元の形状はこれね。

Kong Classic Goodie Bone large  Dog Chew Treat Toy new fast shipping


つまり、全体の4/5くらいがないわけよ。

今朝まではちゃんとあったのよ。
この端っこの穴が開いているところに、父ちゃんがグリニーズを突っ込んでくれるのよ。
おいら夢中になってかじかじしてたら
いつの間にか・・・なんつーか・・・・・んーーー
どうしたんだろね?

父ちゃんと母ちゃんは、必死になって残りの部分を探し回ったんだ。
父ちゃん母ちゃん、これそんなに欲しかったの?

「あんぽんたん!もし、残りを食べちゃったんだとしたら大変なことよ!」

ごめんよ、晩のおかずに使うつもりだったの?

「使うか!
この破片が気道に詰まったら窒息死
食道に詰まったら食べ物が通らなくなる
腸に詰まったら、腸閉塞
死んじゃうかもしれないのよ!
どれだけの量が、アンタの体に入っちゃったのか調べなきゃならないから探してるの!」

それから、母ちゃんはおいらの今朝のうんこを手で触って
中に破片がないか調べたんだ。

おー!出てきたー。小さい破片が2個入ってた。
さすがに写真にアップはできない。
でも、まだまだ足りないんだ。

それから母ちゃんは、ネットでメーカーの商品情報を調べた。
天然ゴム100%でできてるから、食べちゃっても
異物にはなっても、毒物にはならない。
これちょっと安心な情報だね。

あとね、面白いことが分かったよ。

これはね、本来の用途は、犬がお留守番する時に使うおもちゃなんだって。
で、メーカーの注意書きを見ると
「必ず飼い主が見ている前で与えてください。」だって。
それじゃ、お留守番にならないじゃん。
さすが、アメリカ製品。
キャッチーなコピーと、するっとかわす製造責任が醸し出す芳醇な矛盾。

あ、言っておくけどね、こういう事案を完全に防ごうと思ったら
ペット製品なんて、何にも作れない。
メーカーは消費者と法律の狭間で、すごく苦労しているんだろうと思う。
だから、安全な材質とデザインで製品を作るところまでがメーカー責任
与える状況については、当然父ちゃんと母ちゃんの責任だ。

そんなこんなしているうちに、おいら、なんか変・・・。

うえぇっ。

この家に来て、初めてなんか吐いた。
さっき食べたばかりの未消化のご飯と、母ちゃんの親指大の赤い破片。
これも写真にアップははばかられる代物。
お食事前だったらごめんなさいましね。

つまりね、おいらは食っちゃったんだよな。
この大きなゴム製品の大半を。
で、こういう時に限って、土日。
獣医さんはお休み。
年末年始に歯が痛くなるお宅のお子さんたちと一緒ね。
もちろん、24時間対応の救急も近所にあるんだけど
母ちゃん、3年前にそこの獣医とやらかしちゃったのよ。

前に飼っていた愛犬のワクチン接種でそこに行ったら
獣医が母ちゃんの了承も取らずに、勝手に犬にレントゲン照射しちゃったんだって。
で、「膀胱に小さな石がいくつかあるから、すぐに手術しましょう。」だって。
シニアの雄犬で、膀胱に石が全くない犬なんて、まず、いないんだ。
ましてや手術なんて、症状が出てから考えればいいことで。
で、母ちゃんがこの獣医を調べたら
あらら・・・前にも問題起こして、カナダの獣医学会から1年間謹慎食らってたんだって。
ここは移民の国だから、いろんな常識と倫理が混在してるんだ。
だからこそ、何でもよく調べて、よく見極めないといけないんだ、この国では。

ってな訳で、おいらは明日までの上下から出てくるものの量と様子によっては
朝一で病院に駆け込まなければならない。

全国の父ちゃんと母ちゃん

犬のおもちゃは、

人の目の前で与え、目を離す際には取り上げること。

これ、基本ね。




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2016年2月28日日曜日

よかったな、母ちゃん


昨夜のこと。

母ちゃんが突然、おいらをクレートの中に入れたんだ。
その気配がね、ちょっと変だったんだ。

何かあったな

勘がいいおいらは、確信した。

その『何か』に興味はあったんだけど
ここは母ちゃんの言うことを聞くべきだっていう第六感も働いたんだ。

決して、クレートの中に入れられたおやつに釣られたわけじゃないぞ。
断じて違うからな!

それから母ちゃんは静かに庭に出て
誰かと何か話し始めたんだ。

あー、くまこが来たんだ。

くまこもこのブログ見てたんだ。
ネットの力ってすごいなー。

でも、ちびこの気配はない。
あいつも親離れしたのかな。

母ちゃんがくまこに『ごめんね』って何度も言うんだ。
おいら、くまこにちょっとやきもち焼いた。
だって、くまこに話しかける母ちゃんの声
すごくすごく優しいんだもん。

でも、くまこも母ちゃんに優しいの。
くまこには母ちゃんの心の中が見えるみたいなんだ。
くまこの声は人間には聞こえない音域の音だから
母ちゃんには、きっとくまこがしゃべっていることはわからない。
でも、犬のおいらにはわかる。

母ちゃん、くまこは怒ってないよ。
母ちゃんの、おいらと一緒にいる幸せそうな顔が見られて嬉しいってさ。




ちっ!
おいら、嬉しいような悔しいような、複雑な気分だぜ。




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2016年2月26日金曜日

目方でドン!


今日は晴れていたから、父ちゃんと車で海に行ったんだ。


バンクーバーの冬は、すなわち雨季。

はぁー・・・。

ってため息が漏れるくらい、毎日毎日雨が降る。
だから、こんな晴れた日はワンコ持ちにはとても貴重なんだ。

海辺にはたくさんの人と犬が来ていてさ
おいらと同じGSもいた。
おいらより全然小さいパピー。
(写真はイメージ)




おいらはお前より年上だぜ。
ってな訳で、おいらは余裕ぶちかまして堂々としていたんだ。

GSのオーナー同士って、なぜか連帯感があって、すぐに仲良くなれるんだ。
その子の父ちゃんと母ちゃんは中国人で
おいらの父ちゃんに中国語で話しかけてきた。

「お宅のGSはいい犬だね。何歳?」

「うちのは7ヶ月。お宅のGSもいい犬だね。
まだ3ヶ月くらいかな?」

「もう、4ヶ月だよ。」

「えー!うちのは4ヶ月の時、もっと大きかったなぁ。」

おいらの父ちゃんには悪気は全くない。
確かにおいらは普通のGSよりかなり大きくて
最近は周りの人から
「この犬、ジャーマンシェパードじゃなくてキングシェパードなんじゃない?」
って言われてるんだ。

その子の父ちゃんはちょっとがっかりしたようだった。

「この犬$4000したんだ。
お宅のは相当しただろう?」

「体の大きさと金額は関係ないよ。
お宅の犬も本当にいい犬じゃないか。
うちの犬は、買ったんじゃないんだ。
SPCAから引き取ってきたんだよ。」

「えーっ!?
この大きさでタダなの?
うちのはこれで$4000だよ?
お宅は得したなぁ!」

なあ、父ちゃんたち、なんか変だろ?
それって、肉屋でする会話だよな・・・。

それから、みんなに言っておくよ。
SPCAを始め、北米のほとんどの動物保護団体では
犬でも猫でも、引き取り時に規定額の寄付をするんだ。
決してタダという訳じゃない。
年齢と種類、その他の条件によって、寄付金額は異なるよ。
これは有志による団体を維持していくためと
タダだと、命の価値も0だと思って
安易に引き取って、安易に捨てちゃう人も出てくるかもしれないから
その楔なんだね。

おいらはちゃんとしたブリーダーの下で生まれ
最初の飼い主は、お金を払っておいらを買ったんだ。
でも、残念ながらおいらはそこでは幸せにはなれなくて
孤独と飢餓の恐怖から救ってくれたのがSPCAだったんだ。
きっと最初の飼い主も幸せじゃなかったんだろうな。
「犬1匹幸せになれない家で、人が幸せになれるわけがない。」
って、いつも母ちゃんが言ってるもん。

おいらたち動物をモノやアクセサリーではなく
”命”として家族に迎えたいと思ってくれるなら
お金を出して買う前に
まずは、保護された動物たちに目を向けてくれるといいな。
北米の総合里親サイトを見ると
犬だけで、常に数十万頭が暖かい家を待っているんだよね。
おいらたちは運よく保護されても、ずっとそこで暮らせるわけじゃない。
迎えてくれる家族が見つからなかったら
殺処分が待っていることも少なくない。
その現実に目をつぶらないでほしいんだ。

おいらはこれでも運が良かった方だ。
怖い顔した父ちゃんと、大和撫子とは程遠い母ちゃんだけど
ご飯と愛情はたっぷりくれる。
毎日クタクタになるほど運動もさせてくれる。
でも、時々思い出すんだよな。
SPCAで一緒だったあの子たちは、今どうしているんだろう?って。
幸せになっているといいなぁって。




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2016年2月25日木曜日

ごめんね、くまこ


おいらが住んでいるバンクーバーには
いろんな野生動物が、普通に生息しているんだ。

リス、あらいぐま、スカンクは毎日うちの庭を通るし
春になると、マムシも出るし、コヨーテも出る。
母ちゃんが朝バス停に向かったら、カモシカが先にバスを待っていたこともある。
更に2年前には、うちの庭にクーガーが来たんだって。

クーガーは犬なんか平気で襲って食べちゃうし
子供や女性だったら、1対1では人間に勝ち目はない。

だって、これだもん。




毎年、バンクーバー周辺では人がクーガーに襲われるという事件が起こるんだ。

世界で最も住みやすい都市の常連、バンクーバーだけど
結構いろいろあるんだぜ。

ってな訳で、母ちゃんは夜はおいらを外に出さない。

でも、それはおいらの安全のためだけじゃないんだ。


去年、父ちゃんと母ちゃんは最愛の犬を亡くしたんだ。
長い闘病生活の末の、あっけない心臓発作。
父ちゃんと母ちゃんは何か月も泣き暮らしたんだって。
おいらは母ちゃんの笑った顔と怒った顔しか知らないから
1回くらい母ちゃんの泣いた顔を見てみたいと思うんだけどね。

そんなある日、母ちゃんが泣きながら庭仕事をしていたら
誰かが母ちゃんの足を後ろからふわっと触ったんだって。
母ちゃんが振り返ると、1匹のあらいぐまがいたんだ。

by MSVG

あらいぐまっていうのは、普通はすごい臆病で
自分から人間に寄ってきたりしないんだけど
なぜか、このあらいぐまは母ちゃんにすり寄ってきたんだ。
母ちゃんはそのあらいぐまに”あらい くまこ”って名前を付けて話しかけたんだ。
それから毎日くまこは母ちゃんのところにやってきて
ぽよんと触ったり、母ちゃんの顔を見ながらお昼寝したりしていたんだ。

それから半年後の夏の終わりに、くまこは自分の子供を連れてきた。
初めは4匹いたんだけど、日を追うごとに子供の数は減っていって
1ヶ月後には、とうとう子供は1匹になっちゃったんだ。
母ちゃんはその子に”ちびこ”って名前を付けて成長を見守っていたんだ。

大雨が降らない限り、くまことちびこは毎日母ちゃんの元にやってきて
餌がもらえるわけでもないのに、うちの庭で遊んでいく。
母ちゃんの深い悲しみは、こんな思わぬ形で少しずつ癒されていったんだ。
母ちゃんも、くまことちびこが来るのを、毎日とても楽しみにしていたんだ。

あらいぐまって、皆同じ顔してるように見えるだろ?
正直なところ、母ちゃんもちびこと他のあらいぐまの区別は、見た目ではつかない。
でも、くまこははっきりとわかるんだ。
右耳が半分ちぎれてるから。

そんなくまことちびこが、昨年の11月からぱったりと来なくなっちまったんだ。
理由はおいらに違いない。

おいらが何かの気配を察知して、庭に向かって吠えると
母ちゃんは庭にすっ飛んでいくんだけど
おいらに怯えて、くまことちびこはすぐにどこかに行っちゃうんだ。
おいら、見た目ほど怖くないし
結構紳士なんだけどね。

母ちゃんは誰もいない庭に向かって
「ごめんね。」って言うんだ。
そんな母ちゃんを見て、おいらも母ちゃんに「ごめんね。」って言うんだけど

音にすると


あおおおおぉぉぉぉぉーーーーーん!



だから、余計にくまことちびこは来ない。


ごめんね、くまことちびこ。

おいらが寝てから、母ちゃんに会いに来てやって。
母ちゃん、すごく心配してるんだぜ。
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2016年2月23日火曜日

ため息


おいらの父ちゃんがカメラを持つと、神が降りてくる。
父ちゃんはアマチュアだけど、腕のいいカメラマンなんだ。

そんな父ちゃんが撮ったおいらのポートレート。
どうよ?

おいらが生まれ持った高貴な感じがよく出てるだろ?





おいらの家にはオリビアという留学生がいるんだ。
おいらのことをとても可愛がってくれる。
おいらもオリビアが大好きなんだ。

そんなオリビアが撮った1枚。
これもイケてるだろ?





おいらの母ちゃんは前衛的な人。
ま、早い話がテキトーな人だな。
母ちゃんにカメラを持たせると、こんなことになる。





はぁー・・・。
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2016年2月22日月曜日

真実


タロー、お前もそろそろ大人だ。
お前に言っておかなきゃならないことがある。
心して聞いてほしい。
本当のことを知っても、母ちゃんはお前の母ちゃんだということを忘れてくれるな。
いいか?

なんだよ、母ちゃん、改まって・・・。
なんか、怖いじゃないか。



タロー、実はお前は・・・











母ちゃんが産んだ子じゃないんだ・・・。





えええええーーーーーっ!







と、でも言ってほしかったのか、母ちゃん?



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2016年2月21日日曜日

運動


おいらの1日は朝5時に始まる。
まず、父ちゃんがおいらを庭に出す。
この時期のバンクーバーの朝5時は、まだまだ闇に包まれている。
朝露の香りを楽しみながら芝生の上におしっこすると

あー、また楽しい1日が始まる!

って感じがするんだ。

それから父ちゃんはおいらに朝ご飯をくれる。
これが終わると、父ちゃんと散歩に行くんだ。
まだ人がそんなに出ていない住宅地を歩いて近所の川まで出る。
父ちゃんと男同士の話をしながら
川のほとりを1時間半くらい歩くんだ。

家に帰ると、父ちゃんは釣りに出掛ける。
しばらくすると母ちゃんが起きてきて
父ちゃんのご飯を作り終えると、おいらと庭で遊ぶんだ。

もう今のおいらは力が強くて、母ちゃんは引っ張ることができない。
普通に歩いていれば問題ないんだけど
おいら、野ウサギとか、あらいぐまとか見つけちゃうと、すごい勢いで飛び出しちゃうから
体が小さい母ちゃんにはちょっと危ない。

おいらの家を囲むように庭を1周すると、大体100m。
これを毎朝、母ちゃんと25周する。
ずっと周っていると「あれ?今何周目だっけ?」なんて
頼りないことを母ちゃんは言うから
おいらのおやつを25個、庭のテーブルに置いておいて
1周する毎に、おいらに1粒ずつくれればいいじゃんって言ったんだ。

さすが、おいらだろ?
食べることに関してはエキスパートよ。


これが終わると、おいらやっと

あー、体にエンジンがかかってきたーっ!

って感じになる。


おいらたちシェパードとかシープドッグという名前がつく犬はみんな牧羊犬。
ボーダーコリーやキャトルドッグもそうだけど
大地で羊を追い立て回すのが本来の役割なんだ。
だから、ハンパない運動量を必要とする。

この後、おいらはCodyの兄貴と15分1本勝負を戦って
父ちゃんの昼寝が終わったら、ドッグランで1時間走る。
土曜日には更にパピーパーティーに行く。
雨が降ったら、外での運動が減るから
その分、庭を周る回数が増える。

これから牧羊犬を家族に迎えようと考えている人がいたら
まず、この運動量を満足させられるか考えておいたほうがいいよ。
でもね、おいらたちの運動量を満足させていれば
人間もきっと健康になるよ。

ねー、母ちゃん!



あれ?起きて2時間しか経ってないのに
母ちゃんのライフはもう だ。





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2016年2月20日土曜日

一番安心できる場所

なんか、体調が悪いな・・・っていう時
おいらたち犬は、その時点で一番安全な場所を探す。

敵に襲われる心配がない場所
心と体を落ち着かせることができる場所
そして、万一の場合の死に場所
そんなことを本能的に考えるんだ。


おいら今日、病院で今年最後のワクチンを打ったんだ。
いつもは1本しか打たないんだけど、今日は2本打ったんだ。

おいら、この病院に来るとすごく神経が昂るから
ええーい!最後の2本はまとめて打っちゃえ!っていうことになってさ。
Codyの兄貴なんか3本まとめて打つんだから、きっとおいらも大丈夫だろって。

でもさ、やっぱ2本はキツいのよ。
体がだるくなってさ、元気がなくなっちゃうんだよね。

顔が腫れたり、吐いたり、呼吸困難になったら
すぐに病院に来るようにって獣医の先生に言われてて
父ちゃんと母ちゃんも、家に帰ってからずっとおいらのことを見ていてくれたんだ。

昔、父ちゃんと母ちゃんが可愛がっていた犬は
ワクチンの副作用で、『逆くしゃみ』っていう症状が慢性化して
呼吸困難とてんかんに苦しんだんだって。

ってな訳で、父ちゃんと母ちゃんはワクチンにはちょっと神経質なんだ。
けど、法定の狂犬病ワクチンは絶対に打たないといけないし
自然と野生動物が溢れてるカナダで生きているおいらにとって
その他のワクチンも外せないわけよ。

しっかし、だりーなー。
食欲もないし、動きたくない。
うっすら気持ち悪いかも。

で、おいらが選んだ一番安心できる場所っつーのが
やっぱ、ここよ。



父ちゃん、ずっとおいらのこと見ててね。
明日は元気になるからさ。




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2016年2月18日木曜日

消えた魚

おいらの父ちゃんは毎日釣りに行く。
おいらの家の近くには、綺麗な海と綺麗な川があるんだ。
ここで、季節毎にいろんな魚が釣れるんだけど
今の季節だとherring、日本語で言うとニシンが獲れる。
これをうちでは大半を干物にするんだ。
おいらのカルシウム源ね。

おいらたちGSは骨と関節に病気が出やすい。
股関節形成不全ってやつだ。
大概が遺伝に拠るもので、防ぐにも限界があるんだけど
『やれるところまでやってみよー』がポリシーの父ちゃんと母ちゃんは
カルシウム、グルコサミン、コンドロイチンに気を付けた栄養管理をしてるんだ。
あんまり、若いうちから全力で走ったり、肥満になったりすると発病しやすいんだって。

『飯ぐらい好きに食わせろや!』がポリシーのおいらとしては不満もあるんだけど
毎日ニシンの干物がおやつにもらえる生活も悪くない。
これがまた、旨いんだ!

ところが・・・
父ちゃんがおいらのために置いておいた干物が
キッチンカウンターの上から忽然と消えたんだ。
父ちゃんがほんのちょっとトイレに行っている間のことだった。

「お前、食っちゃったのか?」

ま~さか~。

「だよなぁ。
お前、最近盗み食いしないもんなぁ。」

あたぼーよー。

「父ちゃん、絶対ここに置いたんだけどなぁ・・・。」

父ちゃん、ボケちゃったんじゃないの~?

「そりゃ、ヤバいよなぁ。
気をつけないといけないよなぁ。
しょーがない、もう1つ、持ってくるか。」

わーい!わーい!

「父ちゃん、確かにここに置くぞ。ほら。
ちょっと、トイレ行ってくるわ。
・・・・・

なんてな!



ちっ!見つかっちまった。
父ちゃん、卑怯だぜ。
途中で後ろ振り返るなんて。

「どっちが卑怯か、母ちゃんに聞いてみようか?」

ごめんなさい。
どうか、それだけは勘弁してください。




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2016年2月17日水曜日

みんなにありがとう

まだおいらが生まれる前の201412月。

おいらの家の前の通りには20軒くらいの家が並んでいるんだけど
わずか10日間のうちに、このうちの7軒が泥棒に入られたんだって。
うちのお隣さんなんて2回もやられたんだ。

うちは幸い何もなかったんだけど
うちのはす向かいの家もやられて
それをきっかけに、その家ではCodyを迎えることにしたんだ。

今ではこの辺りは、3軒に1軒は犬を飼っていて
そのうちの半分はおいらのような大型犬。

その次の年の暮、この近所では泥棒騒ぎは1件も起こらなかった。
おいらたち犬の防犯効果ってすごいだろ?

「手間と経費もすごいけどね。」

そんなこと言うなよ、母ちゃん・・・。
おいら、肩身狭いじゃないか・・・。

「でも、防犯効果以上のものをお前はもたらしてくれたからね。」

何、何、何、それ?
おいら、何の役に立ってる?

「大きな声でお前を叱るから、腹筋がつくだろ。
いつ噛まれるか分からないから、度胸もつくだろ。」

なんだ、母ちゃん、嫌みかよ。

「まあ、聞けって。」
「散歩に連れて行くから、健康になるだろ。
散歩の途中で、いい友達がたくさんできるだろ。
そうすると、母ちゃんの英語の勉強にもなるだろ。
毎日お前を捏ねくり回すから、脳からアドレナリンがいっぱい出て
すごーく幸せな気分になるだろ。
お前の成長が嬉しくて、明日が来るのが楽しみになるだろ。
お金で買えないものを、お前はたくさん持ってきてくれているんだよ。」

まじ?

「うん、まじ。」

おいら、役に立ってる?

「すごーく、役に立ってる。」

じゃ、ちょっとだけ噛んでもいい?

「いいわけなかろうが!」

こうして、おいらは2ヶ月の時を経て
心からこの家の家族になった。



おいらがこの家に来たばかりの頃は
こんな目をしていたんだ。



ま、どんな顔をしていたって、おいらがハンサムであることには変わりないんだけど
今の顔の方が、ずっとずっとイケてるんじゃないかと、自分でも思っている。



おいらたちGSは頭がいい犬種だから、時々人間の裏をかく。

ま、ずるい犬だ。

人間が次に何をしようとしているのか
次にどんなコマンドがとんでくるのか
人間より先に分かっちまう。

単純な動作を繰り返すと、すぐに飽きちゃうし
飽きちゃったら、人間の言うことも時々無視したりする。
でも、許容範囲もちゃんとわきまえていて
ここから先は、ヤバいかも
っていう勘もちゃんと働く。

だから、人間は時に怒っていいのか、妥協していいのか悩むんだ。

GS6ヶ月って言ったら
犬換算ではティーンエイジャーなんだけど
人換算で言うと、聞き分けの良い5歳児ってところかな。
時にわがままも言うし、癇癪も起こす。

犬の躾については、いろんな人がいろんなことを言うけど
その家によって犬に求めるものが違うから
一概に「こうすべき」って言えない場面も、実際の生活の中ではいっぱい起こる。

おいらの父ちゃんと母ちゃんは
おいらが人間社会で生きていく上で、絶対に許されないことは絶対に許さない。

人間に危害を加えない。
拾い食いやテーブルの上の食べ物を盗らない。

これだけが絶対条件なんだ。
命に直接関わるからね。

あとは状況と成長に応じて、いろいろ面倒臭く要求されるんだけど
ま、特別な事情がない限りは、おいらも聞いてやるんだ。
でも、父ちゃんと母ちゃんは、おいらの事情を理解しようと努めてくれる。

例えば、無駄吠え。

おいらたちが吠える時は、おいらたちなりの理由が必ずある。
本当に無駄かどうかは、状況を確認するまで分からないだろ?
だから、父ちゃんと母ちゃんは、おいらが吠えた理由をちゃんと確認してくれる。

おいらが吠えた理由が、人間にとって取るに足らないものであれば
「大丈夫だよ。」って教えてくれる。

おいらは、これがとても嬉しい。
信用されてるなって思う。
繰り返していると、何が大事で、何が小事か、おいらにも分かってくる。

あとね、呼ばれてもすぐに行かれないこともある。

うんこしている時とか、厳しいじゃん。
不穏な気配や音に神経を集中させている時も、無理。
特に子犬の時は好奇心旺盛だから
何か面白いものを見つけちゃったときなんかも無理。

だから、そうじゃない時に呼んでね。
そして、コマンド通りに来たら、必ず褒めてね。
これがおいらたちの自信になるんだ。

簡単なことを繰り返して、褒めて、励ます。
お宅のお子さんたちと同じ公文式ってやつね。

それからね、おいらたちも生き物だから、機械になることを望まないで欲しいんだ。

人間と同じで、嫌いなものは嫌いだし
機嫌のいい時も悪い時も、体調のいい時も悪い時もある。

おいらたち、言葉がしゃべれないだろ。
でも、人間が言っていることは、人間が思っているより分かってるんだぜ。
逆に、人間は犬の言葉が分からないだろ?
分かろうとも思わないだろ?
でも、人間は人間の言葉が理解できない犬を叱るだろ?
なんか、おかしくねーか?
おいら、別に不平を言ってるわけじゃないんだ。

ただ、おいらたち犬は、人間社会で圧倒的に不利な立場で生きていかなければならないっていう現実を、ほんのちょっとだけ分かってほしいんだ。
おいらたちは、いつ何時も、人間より小さな頭で
人間を分かろうと努力しているってことを分かってほしいんだ。

みんな、おいらのつぶやきを読んでくれてありがとう。
おいらと父ちゃん、母ちゃんの格闘の記録はとりあえずここまでなんだ。
明日からは、日々の成長記録をリアルタイムで綴るから
これからも読んでもらえたら嬉しいぞ。

第1章のエンディングに改めて言いたいことがある。

おいらを助けてくれたSPCAのローレイさん。
本当に本当にありがとう。
ローレイさんがくれたセカンドチャンスをおいらは大事に生きていくよ。

おいらが今の家に来られるように力を貸してくれたあけみおばちゃん
たくさんのことを教えてくれるCodyの家族の皆さん
おいらの訪問を喜んでくれるLindaとKent
散歩の途中でおいらに優しく声をかけてくれるご近所の皆さん
おいらのことが嫌いな獣医の先生も
おいらが幸せになれるように手を貸してくれた皆さん、全員にありがとう。




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おいらは無敵・・・でもご飯には勝てない

おいらがちょうど6ヶ月になった日の朝
庭で朝の儀式をしていたんだ。

いわゆる、食って、走って、出すってやつだ。

おいらの気配を察知したCodyの兄貴が遠吠えでおいらを呼んだんだ。
おいら、嬉しくってさー
おいらも兄貴の真似して応えたんだ。


あおおおおぉぉぉぉぉーーーーーん!



更に兄貴が呼ぶからさ、おいらも必ずそれに応えて、もう大合唱。
声を合わせているうちに、おいらついつい興奮しちまって
うちのゲートの鉄柵を乗り越えようとしたんだ。

ところが、うちの鉄柵はいくつもの長槍を縦に組み合わせた構造になっていて
槍がおいらの腹に食い込んで、痛くて、苦しくて
鉄柵のてっぺんでもがくことになっちまった。



焦ったねー。
いや、おいらじゃなくて、母ちゃんが。

幸い、槍の先は丸くなっているから、腹に刺さることはなかったんだけど
鉄柵の向こうはすぐ車道になっているから
まだ、バランスよく周囲に注意を払えないパピーのおいらが車に飛び出したらどうしようと
母ちゃんがおいらの尻を抱えて引きずりおろしたんだ。

「これを乗り越えたらダメ!」

だって、兄貴が呼ぶんだもん・・・。

「車に轢かれたらどうするの?」

おいら、車にだったら勝てそうな気がするんだもん。

「車に勝てる犬がいるか!」

じゃあ、おいらが第一号になるよ。

「ならんで、よろしい!」

うん、わかったよ。
母ちゃんが見ているところでは乗り越えないことにするよ。

「じゃあ、母ちゃんはいつも見ていることにする!
庭に出る時もリードをつけることにする!」

ちっ!おいらが見つけた楽しみは、いつも母ちゃんに潰される。
やっぱ、おいら、母ちゃんが嫌いかも。

「嫌われるのが母ちゃんの仕事だから、上等だね。
ところで、ご飯は誰にもらうんだっけ?」


おいら、母ちゃんだーーーい好き!

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おいらの初恋

5回目のパピーパーティーは母ちゃんが行くのをためらった。

「せっかく連れて行っても、全然動かないんだもの。
早く帰りたがるし・・・。」

だってさー、おいら最近、身体がどんどん大きくなっていくだろ?
脳味噌も成長していてさー
年上の刺激的な犬と遊びたいんだよ。
Codyの兄貴みたいな立派な犬とさ。
あそこ、ちっちゃいのばっかりじゃん。

「でも、今日は雨だから、あそこで運動させてもらおう。」

ってな訳で、おいらはまたもやパピーパーティーに行ったんだ。

かったりーなー

って、最初は思ってたんだけど
おいら、そこで運命の子に会っちまったんだ。

その子は母ちゃんの拳くらいの大きさで生後3か月のテリア。
ちょー、可愛いの。

ほらほら、そんなにちょろちょろしてたら、大きな犬に踏まれちゃうよ。
僕が守ってあげるから。

あー、もうしょうがないなぁ。
そんなに遠くに行っちゃダメだって。

おいらはその子を舐めて、抱えて
どこかに行こうとすると、咥えて連れ戻す。

その子の母ちゃんは最初は冷や冷やしていたみたいなんだ。
だって、おいらだったら、その子を一飲みにできちゃうくらいに
大きさに差があるからね。

けど、おいらの紳士的なエスコート振りを見て、段々安心したらしく
終いには、大笑いしながら、ビデオを回していたんだ。
おいらの父ちゃんと母ちゃんも、すごく嬉しそうだった。

やきもち焼きのハスキーの女の子が、おいらにちょっかい出すから
おいらには、もう心に決めた子がいるんだって伝えに言っている隙に
その子はいなくなっちゃったんだ。

おいらもう、必死に探したさ。

他のでっかい犬に食べられちゃったらどうしよう?
マウンテンドッグに踏まれでもしたらどうしよう?

ドキドキしながら、その子の臭いを追跡していったんだけど
その子の臭いは、出入り口でどうしても途切れちゃうの。

母ちゃんに、一緒にあの子を探してって頼んだんだけど
「まだ、あと30分ここで遊ぼう。」ってとんちんかんなことを言うんだ。

おいらの別名が『がんこちゃん』だって忘れてるだろ?


おいらは、外に出るぅぅぅ。


あの子を探しに行くぅぅぅ。



おいらのはにーぃぃぃ!


出入り口の柵を壊そうと、おいらもう、鬼の形相。

「しょうがないねぇ。じゃあ、もう帰ろうか?」

違う!違う!違う!


帰っちゃダメぇぇぇ。


あの子に会えなくなっちゃうぅぅぅ。

「あの子だったら、もうとっくに帰ったよ。
小さいから、疲れたんじゃない?」

ふぇ?

帰っちゃったの?

まじ?


おい、ハスキー、ちょっと遊んでやろうか?

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いい子

4回目のパピーパーティーは、もう、かったるくってさー。
嫌々遊んでたんだけど、闘志剥き出しのピットブルに追い回されて
後半は逃げて回っていたんだ。

おいら、厄介事は面倒臭くて嫌なんだ。

そうしたら、そいつの父ちゃんが、うちの母ちゃんに言ったんだ。

「お宅の犬は、体が大きいのに、気が小さいね。
これじゃ、番犬は無理じゃない?」

やっべー。

おっちゃん、やめときな。
うちの母ちゃん、ホントあれなんだから。

「怖いものを怖いと認識できるっていうことは
うちの子の脳味噌が正常に働いているっていう証拠なんですよ。
怖いものを認識できない犬の最期って、大概悲惨ですもんねー。
そう言えば、先日、ピットブルが飼い主を噛み殺して安楽死させられたって
新聞に書いてありましたよねー。
可哀想にねー。
あー、お宅のワンちゃん、すごい元気で可愛いですね。
何ていう種類の犬ですか?」

おっちゃんもそろそろ怖いものを知ろうな。

このパピーパーティーには、問題を抱えた犬もたくさん来ているんだ。
最近のニューフェースは、GSとボーダーコリーのmixの女の子。
名前はGinger。

飛び切り賢い血統じゃん!
しかも、結構美人さん。

GingerもSPCAから優しそうな夫婦に引き取られてきたんだけれど
人にも、他の犬にも全く心を開かない。
目に入るもの、全てが敵だと思っているんだ。
パピーパーティーの間中、他の犬に吠え付いていた。

Gingerの両親はとても悲しそうで、疲れた様子だった。
おいらも、この間まで彼女と同じ状態だったし
彼女の心から血が流れているのがわかるんだ。
それでついつい、彼女に近寄っていったんだ。

いやー、怒られたのなんのって!

君は前の飼い主にどんなことをされたの?
ご飯、ちゃんと食べてる?
君はもう、何も心配しなくていいんだよ。
この人たちは、きっといい人たちだ。
いつか、一緒に遊ぼうね。

おいらの母ちゃんが、Gingerの母ちゃんに話しかけた。

「信じられる?
うちの子も、2ヶ月前まで、この子と同じ状態だったのよ。
とても大変だってわかるわ。諦めないであげてね。」

彼女の母ちゃんの目に涙が浮かんでた。

Codyとおいらと、Ginger
どの子も同じGSなのに、どうしてこうも違うんだろうね?
どうして、幸せな犬と不幸な犬がいるんだろうね?
おいらたち犬は、生まれた時はみんな同じように可愛かったはずなのに。
人の世に生まれてきたおいらたちは
人の手を借りなければ幸せにはなれないんだ。
人の手が差し伸べられる子と、そうじゃない子はどこが違うの?

なあ、母ちゃん、おいらさー
みんながおいらのことを、ダメだ、ダメだって言うだろ?
おいら、そんなにダメか?
なんでダメで、どうしたらいい子になるのか
おいら、全然わからないんだよ。

でも、父ちゃんと母ちゃんに愛されたいし、褒めてもらいたいの。
でも、病院は嫌いだし、しつこい子犬も嫌いなの。
嫌なものは嫌なの。
こんなおいらはダメな犬なの?

「子供は余計なことは考えなくてよろしい。
お前はいい子だって、父ちゃんも母ちゃんもちゃんと知ってるよ。
お前はお前。
他の子と同じになる必要はないの。
お前らしいいい子になれば、それでいいの。
うちでご飯食べて、たくさん運動していれば、自然といい子になるよ。」

いい番犬になれないかもしれないよ。

「そんなの、初めから期待してないよ。」

じゃあ、どうしておいらを引き取ったの?

「お前となら、いい家族になれると思ったからだよ。」


おいら、いい子になってもいいかな・・・。

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あすなろタロー

それからの父ちゃんと母ちゃんは
おいらに「やりすぎちゃうの?」っつーくらい毎日毎日運動させて
徹底的に甘えさせてくれたんだ。

「足りないものは、与えればいい。
栄養も、運動も、愛情も十分に注げばいい。
犬に文句を言うのはそれからだ。」

父ちゃんの鶴の一声で、それからのおいらは大変だった。
家族の誰かと目が合うと

可愛いね。
いい子だね。
大好きだよ。

と、捏ねくりまわされる。

でもね、みんな本気でそう言ってくれるんだ。


中でもおいらが好きな言葉は

お前のことを信じてるよ。

これはおいらにとって魔法の言葉なんだ。
おいらたち誇り高いGSにとって
信頼を裏切るなんていう思考回路はない。
まさに『武士の中の武士』
それがGSよ。

1週間後、また病院に行ったんだ。

この病院ではワクチンを1回に大量に打ったりしないんだ。
ワクチンには怖い怖い副作用があるからね。
知識も腕も申し分ない獣医で
父ちゃんと母ちゃんは随分前からこの獣医を知っていて信頼しているんだけど
どうも、こいつおいらのことが嫌いらしい。

仕方ないんだけどね。
だって、おいらこの病院に来ると本当にmadなんだもん。

日本でも「犬がバカなのは飼い主がバカだからだ。」って言うだろ?
北米はもっとそういう思想が徹底していて
バカ犬の飼い主は、社会的に軽蔑されるんだ。
おいら、この病院に来るとバカ全開になるから
父ちゃんと母ちゃんも『どーしょーもないバカ』って思われてる。

ごめんな、父ちゃん、母ちゃん。

でもさ、北米で獣医って言ったら
人間の医者よりずっとずっと勉強してるんだぜ。
心に傷を負った犬が、その傷が癒えるまでにどれだけの時間が掛かって
どれほど、父ちゃんと母ちゃんが苦労しているかわかるだろ?
犬をレスキューするって、そういうことだろうがよ。
それでもそんな態度なら、おめーも、結構バカだな。

「タロー、あの獣医が腰抜かすほど立派なGSになろうな。
お前は唯一だけど、獣医は他にもいるからね。」

わかってらー。
おいら、明日はヒノキになるあすなろタローだぜ!

「あすなろは、最後まであすなろのままなんだけどね。」

ちっ・・・。

そういう夢のないこと言うんじゃねーよー。

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甘噛み

父ちゃんと母ちゃんはおいらに保険を買ってくれるんだって。

保険って、旨いのかな?
それとも、楽しいおもちゃかな?

で、その保険を買うために、病院で検査を受けなければいけないんだって。
ってな訳で、大嫌いな病院に行ったんだ。

この病院はワクチン接種で4回来ていて
毎回、注射の度におやつをたくさんくれるんだ。
先生がおやつをくれた時に、おいら嬉しすぎて先生の手を噛んじゃったんだ。
おいらとしては甘噛みのつもりだったんだけどね・・・。

そしたらさー、それまではお客さん扱いしてくれてた先生が
本気で怒っちゃってさー

「この犬はちゃんとトレーニングしてるの?
トレーナー替えた方がいいよ。
同じ月齢の犬はこんなじゃないよ。
首輪も電気で興奮を抑えるやつを付けた方がいいね。」

「トレーナーより獣医を替えた方がいいかも。」
母ちゃんが日本語でぼそっと呟いた。

おいらは確かに同じ月齢の他の犬より興奮しやすいんだ。
興奮したら、自分ではなかなか抑えられない。
父ちゃんと母ちゃんはおいらの甘噛みを絶対に許さなくて
甘噛みの度にマズルを掴まれて、地面に押さえられちゃうから
おうちの中ではやらかさないんだけど
外に出ると、おいら、ついついはっちゃけちゃって
覚えたこともぜーーーんぶ忘れちゃうんだ。
最近は歯もしっかりしてきたから、父ちゃんと母ちゃんはちょっと焦ってる。
おいらだって、やっちゃいけないって、ちゃんとわかってるんだ。

「同じ月齢の他の犬っつったてさー
最初の4ヶ月が悲惨だったこの子に、他の子と同じ成長を求めたって無理だよねー。」

母ちゃん、ありがとうな。
おいら、嬉しいよ、母ちゃんが分かってくれて・・・。

「当たり前じゃん。アンタそんなに頭良くないんだから。」

・・・おいら、2度と甘噛みはしねーと心に誓ったね。


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ピンチ!

近所の兄犬Codyは本当にいい兄貴で
朝、おいらを呼んでくれるんだ。

Codyと遊ぶのはすごく楽しくて
Codyと遊ぶ度にお前はいい子になるね。」って
父ちゃんと母ちゃんも喜んでいる。

おいらが悪いことをしそうになると
兄貴は小枝やおもちゃを咥えておいらの気を逸らそうとしてくれるんだ。
これで、おいらが叱られるチャンスは大幅に減る。

父ちゃんと母ちゃんに叱られても
おいらの心の中には「なんで?」っていう気持ちがあるんだけど
Codyに教えてもらうと、無条件で「そういうもんなんだ。」って思えるから不思議だよな。

毎週土曜日においらはパピーパーティーに行くんだけど
実はおいら、3回目くらいで飽きちゃったんだ。
いつも、Codyみたいに出来のいい兄貴に遊んでもらってるだろ?
ちっちゃい犬たちに囲まれても、ちっとも面白くないんだよな。
早く帰ってCodyと遊びたくなっちゃうんだ。

それでも父ちゃんと母ちゃんが「Go!」って言うから
まあ、仕方ないよな。
おいらもCodyみたいな兄貴犬の真似をしてみたくて
おもちゃを咥えてみんなを先導してみたんだ。
面白いようにみんながおいらの後を着いてくる。
気持ちいいったらありゃしない。

でも、なんか変なんだ。
ふと気がつくと、みんなの目が怖いの。
なんで?と思っていると、45匹の犬に囲まれながら
あらら・・・部屋の隅に追い詰められていたんだ。

ヤバイ!
おいら、本能的にそう思ったね。
おしっこ漏らすかと思った瞬間だった。

しゅっと誰かが犬の中に割って入って来たんだ。


があぢゃぁぁぁぁぁーーーん!


さすが、おいらの母ちゃんだぜ!
おいらを囲んでいた犬たちが母ちゃんの目を見て散り散りに去っていった。

へぇーんだ!おいらの母ちゃん、忍者なんだじょー!
ついでに、お前らの母ちゃん、でーべーそぉぉぉーー。

それからおいらは母ちゃんの後ろに隠れてみんなと遊ばなくなった。

もう、おいら、母ちゃんのこと好き!好き!

「もー、3回で飽きちゃって、困った子だね。
12回分のお金払ったのに、どうすんのよー。」


まー、細かいことは気にすんなって。

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2016年2月16日火曜日

家訓

おいらの家のキッチンはドアで仕切られていて
母ちゃんが料理をする時はこのドアが閉められちゃうんだ。

おいらはこれが辛くてたまらない。

で、いつもドアの外で母ちゃんが出てくるのを待っているんだけど
この日は母ちゃんがなかなか出てこなかったんだ。

やっと出てきた母ちゃんはトレーを持っていて
下から見上げるおいらには、顔を隠しているように見えたんだ。

おー、いないないばーだな?

おいら、母ちゃんだって知ってるぜ!

嬉しくて、母ちゃんに飛びついたんだ。

視界からトレーが消えて、母ちゃんの顔が見えるかと思ったら
別の物がおいらの顔めがけて降って来た。


きゃいーん!

体験したことのない、初めての感覚、ショッキングな不快感に襲われた。
熱いスープがおいらの顔にかかったんだ。
父ちゃんが氷で冷やして、薬を付けてくれたんだけど
おいらはそれから、人に飛びつくことに躊躇するようになったんだ。

「死なない程度に痛い思いをしながら学べ。」


これが我が家の家訓らしい。

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離人不安とやきもち

おいらたち犬の寿命は715年。
人間の寿命の1/71/5なんだ。
だから、人間にとっての1秒はおいらたちにとっては57秒に感じる。
1時間離れていると5時間~7時間離れていた気がしてしまうんだ。
人間はよく言うだろ?
「たかが1日。」って。
その1日はおいらたちには1週間の意味なんだ。
だから、全然『たかが』なんかじゃないんだよ。

たくさんの父ちゃんと母ちゃんはおいらたち犬の軽い離人不安を歓迎する。
やっぱ、ずっと自分の後を付いてくる犬って可愛いじゃん。
犬があんまり精神的に独立しちゃうと
今度は人間の方が離犬不安になっちゃったりしてさ。

でも、おいらの父ちゃんと母ちゃんは
人間の顔色だけを伺いながら生きていく犬を不憫だと思っているんだ。

呼んだら必ず来る。

それだけ守れたら、後はおいらの世界を作った方が幸せだと思っているんだ。
それには犬の多頭飼いがいいんだけれど
それは、父ちゃんと母ちゃんにはいろんな意味で厳しい。

そこで、おいらはパピーパーティーに参加することになったんだ。

おいらが行ったパピーパーティーには
毎回2040頭くらいのパピーたちが来ていて
種類も大きさも実に様々。
一番小さいのは母ちゃんの握りこぶし大くらいで
一番大きかったマウンテンドッグなんか、パピーのはずなのに100kg近くありそう。
おいらは大体いつも2番目くらいの大きさかな。

おいらは他の犬と走ったり、おもちゃで遊んだりしていたんだけど
父ちゃんと母ちゃんが視界から消えると
もう、遊びなんかどうでもよくて
ひたすら父ちゃんと母ちゃんを探すんだ。
それを見たよその父ちゃんと母ちゃんたちは
「飼い主だけを見ているいい犬ね。羨ましいわ。」って言うんだけれど
父ちゃんと母ちゃんのおいらを見る目は、どこか悲しげなんだ。

パピーパーティーでのおいらは
小さい子とも仲良く遊ぶし
大きい子に攻撃されてもスマートにかわすし
何というか、実に紳士的。
よその父ちゃんと母ちゃんにも大人気!

だったんだ。前半はね。

おいらの母ちゃんはすごく犬に好かれる人。
たくさんの犬が母ちゃんに寄っていく。
母ちゃんも犬が大好きな人。
寄ってきた犬にはとても優しい。

母ちゃんが白いシェパードの頭を撫でたんだ。
そいつはうっとりした顔をして、母ちゃんにすりすりするんだ。

おいおい、若いの、やめとけよ。
その女、優しそうに見えて、結構ヤバイんだぜ。
痛い目に遭わないうちに帰りな。
ほらほら、帰れ。
帰れったら!

帰らないと噛み殺すぞ、てめー!


これはおいらの母ちゃんなんだからぁぁぁぁぁ!



爆発しちまったぜ。おいら。

そのシェパードを一喝して、力づくでどかし
母ちゃんの横に座って、あとはもうテコでも動かなくなった。

「タロー、母ちゃんはお前だけの母ちゃんだから心配するな。
ほら、遊んでおいで。
母ちゃん、ここで待ってるから。」

やなこった!

それからみんなはおいらのことを
『いいこ』じゃなくて『がんこ』と呼ぶようになった。
字にしたら、大した差はないから、どうでもいいや。

ってな訳で、おいらの離人不安はやきもちを伴って益々大きくなっていったんだ。


ある日、おいらは本当に痛い目に遭ったんだ。

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