おいらの家はバンクーバー郊外の住宅地に位置していて、近所にはおいらと同じGSを筆頭に、ハスキー、ラブラドール、ロットワイラーといった大型犬がたくさんいるんだ。
散歩の途中ですれ違う大型犬は、おいらが喧嘩を仕掛けて吠え付いても全く意に介さないで悠々とすれ違っていく。
これが悔しいんだよな。
「お前みたいのとは格が違うんだよ。」と奴らの目が言うんだ。
この犬には犬社会の経験が必要だ。
うちの犬と遊ばせよう。
うちの犬と遊ばせよう。
って言ってくれたんだ。
おいらは喜んだね。
けど、おいらの父ちゃん、英語が全く分からない困った中国系カナダ人。
相手が何を言っているのか、自分は何と答えていいのかわからないから、いつもの如く母ちゃんを呼びに行ったんだ。
とても親切な申し出に対して、父ちゃんは何も言わずに走り出したから、このインド人はさぞや驚いたことだろう。
インド人もびっくり!
母ちゃんが駆けつけてきた時には、このインド人のおじさんは少々、不機嫌な顔をしていた。
まあ、当然だよな。
言葉がわからないと不自由なことがいろいろあるだろ?
だから、父ちゃん、おいらのもどかしさもわかってくれよな。
母ちゃんが間に入ってくれて、大きなGSをやっつけられるかと思ったら、おいらすげー、興奮したんだよな。
ところが、相手の有難い申し出に対する父ちゃんの答えは「No!」だった。
理由は「向こうの犬があまりに大きくて、怖そうで、うちの犬が殺されちゃう。」
これには母ちゃんも笑った。
「犬や狼っていうのは、相手が死ぬまで攻撃することは滅多にないんだよ。」
で、母ちゃんが間を取り持ってくれて
おいらはやっとそのGSを倒す機会に恵まれた。はずだった・・・。
相手の名前はCody。1歳3ヶ月、体重約50kg。
挑戦相手、名前はTaro。もうすぐ5ヶ月、体重この時19kg。
若さと気力だけで勝てると思ったんだ。
自分にできないことがあるなんて、思いもしなかった。
吠えて、相手の周りをくるくる回って威嚇して、噛み付いて
はー、疲れたと思った頃、Codyが前足で軽くおいらを払ったんだ。
おいらは3回転して、気がついたら仰向けになっていた。
何が起こったかわからなくて、もう1回飛び掛かっていったんだ。
今度はCody、ちょびっと本気出して、おいらの耳を噛んだんだ。
「きゃいーん!」
焦ったねー。
いや、おいらじゃなくて父ちゃんが。
でも、Codyの父ちゃんは止めないの。
おいらの父ちゃんにも「大丈夫、大丈夫。」と言うんだ。
おいらがこんなに甘く切ない声で助けを求めても両方の父ちゃんは助けてくれない。
仕方ねーなー。
おいらも本気で行くぜ!!
目指すは奴の脇腹だ!
ちゅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ・・・。
Codyのおっぱいは懐かしい味がした。
家に帰ったら母ちゃんが撫でてくれた。
「まだ、お母さんのおっぱいが恋しいんだね。」
おいらは顔が真っ赤になった。
「でもアンタ見境ないね~。
Codyは男の子だよ。」
おいら、やっぱ、母ちゃんが嫌いだ!
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