おいらたち犬の寿命は7~15年。
人間の寿命の1/7~1/5なんだ。
だから、人間にとっての1秒はおいらたちにとっては5~7秒に感じる。
1時間離れていると5時間~7時間離れていた気がしてしまうんだ。
人間はよく言うだろ?
「たかが1日。」って。
その1日はおいらたちには1週間の意味なんだ。
だから、全然『たかが』なんかじゃないんだよ。
たくさんの父ちゃんと母ちゃんはおいらたち犬の軽い離人不安を歓迎する。
やっぱ、ずっと自分の後を付いてくる犬って可愛いじゃん。
犬があんまり精神的に独立しちゃうと
今度は人間の方が離犬不安になっちゃったりしてさ。
でも、おいらの父ちゃんと母ちゃんは
人間の顔色だけを伺いながら生きていく犬を不憫だと思っているんだ。
呼んだら必ず来る。
それだけ守れたら、後はおいらの世界を作った方が幸せだと思っているんだ。
それには犬の多頭飼いがいいんだけれど
それは、父ちゃんと母ちゃんにはいろんな意味で厳しい。
そこで、おいらはパピーパーティーに参加することになったんだ。
おいらが行ったパピーパーティーには
毎回20~40頭くらいのパピーたちが来ていて
種類も大きさも実に様々。
一番小さいのは母ちゃんの握りこぶし大くらいで
一番大きかったマウンテンドッグなんか、パピーのはずなのに100kg近くありそう。
おいらは大体いつも2番目くらいの大きさかな。
おいらは他の犬と走ったり、おもちゃで遊んだりしていたんだけど
父ちゃんと母ちゃんが視界から消えると
もう、遊びなんかどうでもよくて
ひたすら父ちゃんと母ちゃんを探すんだ。
それを見たよその父ちゃんと母ちゃんたちは
「飼い主だけを見ているいい犬ね。羨ましいわ。」って言うんだけれど
父ちゃんと母ちゃんのおいらを見る目は、どこか悲しげなんだ。
パピーパーティーでのおいらは
小さい子とも仲良く遊ぶし
大きい子に攻撃されてもスマートにかわすし
何というか、実に紳士的。
よその父ちゃんと母ちゃんにも大人気!
だったんだ。前半はね。
おいらの母ちゃんはすごく犬に好かれる人。
たくさんの犬が母ちゃんに寄っていく。
母ちゃんも犬が大好きな人。
寄ってきた犬にはとても優しい。
母ちゃんが白いシェパードの頭を撫でたんだ。
そいつはうっとりした顔をして、母ちゃんにすりすりするんだ。
おいおい、若いの、やめとけよ。
その女、優しそうに見えて、結構ヤバイんだぜ。
痛い目に遭わないうちに帰りな。
ほらほら、帰れ。
帰れったら!
帰らないと噛み殺すぞ、てめー!
これはおいらの母ちゃんなんだからぁぁぁぁぁ!
爆発しちまったぜ。おいら。
そのシェパードを一喝して、力づくでどかし
母ちゃんの横に座って、あとはもうテコでも動かなくなった。
「タロー、母ちゃんはお前だけの母ちゃんだから心配するな。
ほら、遊んでおいで。
母ちゃん、ここで待ってるから。」
やなこった!
それからみんなはおいらのことを
『いいこ』じゃなくて『がんこ』と呼ぶようになった。
字にしたら、大した差はないから、どうでもいいや。
ってな訳で、おいらの離人不安はやきもちを伴って益々大きくなっていったんだ。
ある日、おいらは本当に痛い目に遭ったんだ。
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