翌日、母ちゃんは仕事を終えて、夕飯の支度をしてからおいらを迎えに来てくれた。
おいら、もう嬉しくってさー。
だって、おいら捨てられたのかもしれないって、ちょっとだけ思ってたんだもん。
「お腹の中のゴムは全部出てきましたよ。手術は必要ありません。
でもね、あと1日病院に来るのが遅れていたら、腸が壊疽を起こして危険だったかもしれません。
血液検査の結果は完璧で、白血球も正常値ですから、もう大丈夫ですよ。
帰ってから、うんちに血が混じることがありますが、それもすぐに収まります。
おしっことうんちは済ませているので、帰るまで心配いりませんよ。」
って先生が母ちゃんに言っている間に
ちゅるるる・・・・・じょおおおおぉぉぉぉ
受付でもらしちまった。内緒だぜ。
だって、座った途端に膀胱が押されて、出ちゃったんだもん。
出始めたら、止まらなくなっちゃったんだもん。
で、このタイミングで渡された請求書に母ちゃん
まあ、大体日本の標準世帯収入の1ヶ月分くらいの請求額。
持っててよかったVISAカード
入っててよかったペット保険
母ちゃんが病院の支払いを済ませて、タクシーを呼んでもらったんだけど
ちょうどラッシュアワーでさ、なかなか来てくれないのよ。
で、ここね、交通量が多い交差点の角にあって、タクシーが止めにくいところでさ
おいらと母ちゃんは交差点の角のところで待ってたわけよ。
いろんな人と車と犬が、今まで見たことのない大群で動いているもんだから
元気になっちゃったおいらとしては、当然興味津々。
あっちにも、こっちにも行ってみたいわけ。
だって、おいらが住んでいる環境とは全然違う空気感なんだもん。
東京の地理に詳しい人は想像してみてほしい。
銀座の昭和通りと晴海通りの交差点の角で
どこに飛んでいくかわからない黒い米俵を紐で繋いでタクシー待ちしているおばちゃんの姿。
これがまさにこの時の母ちゃんの姿よ。
※ 実物の母ちゃんとは(大きく)異なります。念のため。
怪我している上に、2日徹夜している母ちゃんは、もう完全にポンコツで
振り払えるんじゃないか?って思えるから、余計おいらは騒ぐわけ。
ま、俗に言う『ナメてる』っていう現象よ。
でも、おいらが飛び出したら、2人とも車に轢かれちゃうじゃん。
道行く人に飛びついてもダメじゃん。
母ちゃんはすごい力で、左手でおいらの首輪、右手でリードを握って
交差点でタクシーを待つこと1時間。
一瞬の気の緩みも許されない状況。
多分、これこそが今回の一連の出来事の中で、母ちゃんにとっての一番の修羅場だっただろうな。
おいらは学習した。
母ちゃんという生き物は人間とはちょっと違うんだ。
おばちゃんという生き物は人間とはかけ離れているんだ。
やっと来てくれたタクシーに乗って、おいらは家に帰ってきたんだ。
タクシーから降りた途端に、Codyの兄貴と近所の子供たちが
おかえり!タロー!って喜んでくれた。
学校から帰ってきたオリビアもおいらを見て抱きしめてくれた。
オリビアはバッサリ剃られたおいらのお腹とすっかり痩せちまった体を見て
「可哀想に・・・」
ってつぶやいた。
おいらが元気で生きていることをみんなが喜んでくれるから
おいらは頑張って長生きしてやることにした。
喜べ、母ちゃん。
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