2017年9月6日水曜日

おいらだって鎹(かすがい)


カナダで子どもがいる夫婦が離婚すると、通常、子どもは定期的に父母の元を行き来しながら成長することになる。
日本のように離婚した夫婦のどちらか片方だけが親権を持つなんてことは、特別な場合を除いてない。離婚しても、子どもにとっては父であり、母であるという事実は子どもが生きている以上消えないし、子どもが成人になるまで親としての責任も双方ともに免れない。それに、子どもから父が母を、もしくは母が父を取り上げるという権利はないもんな。
だからカナダの子どもは、両親が離婚しても『片親』にはならないんだ。


母ちゃんのお友達で3年前に離婚した人がいるんだけど、2人の間の子どもは学校がある間はお母さんとバンクーバーで暮らし、学校の長期休暇中はロンドンでお父さんと暮らしてたんだ。
けど、最近のロンドンは時々物騒だろ?
それで今年の夏は子どもがロンドンに行くんじゃなくて、お父さんがバンクーバーに来て子どもと離婚したお母さんと3人で暮らすことになったんだ。
久しぶりにお父さんとお母さんと一緒に過ごしたら、11歳のその子はとっても明るくなって、食欲も出て、夏の間にびっくりするくらい体と心が成長してさ、それを見たお父さんとお母さんはよくよく考えて、また夫婦としてやり直すことにしたんだってさ。
バンクーバーの公立学校は今日から新学期なんだけど、その子はきっとスキップしながら学校に行ったんだろうな。

法律がどうであれ、子どもってやっぱり鎹(かすがい)なんだな。


母ちゃんのもう1人のお友達は結婚する時に子犬を飼っていた。
相手の人も子犬を飼っていて、2人の結婚後、2頭は兄弟のように仲良く育ったんだ。
4年後2人は離婚することになり、それぞれがもともと飼っていた犬を引取って別々に暮らすようになったんだけど、この2頭が互いに相手の犬を思って毎晩毎晩うろうろしながら泣くんだって。
不憫に思った2人は週に1回だけ、以前に2頭を遊ばせていた公園で一緒に遊ばせることにしたんだ。2頭はものすごく喜んで、別れ際はかつての父ちゃん、母ちゃんに甘えてすがって、泣いて別れを拒む。そんなことが続いて、この2人も結局また元の鞘に収まることになったんだ。

おいらたち犬も立派な鎹になるんだよな。

なあ、父ちゃんと母ちゃんが別れたら、おいらはどっちの子になるの?


そうだな、父ちゃんも母ちゃんもずっとお前と一緒にいたいから
頭は母ちゃんが引き取って
お尻は父ちゃんが引き取るとするか。
どうだ?


・・・・・。
父ちゃんと母ちゃんは絶対に別れちゃダメだ!









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