おいらはデカいから、ちょっとはっちゃけちゃっただけで、物を壊したり、畑や花壇を荒らしちゃったりするんだ。
それは自分でも最近わかってきたから、おいらなりに気を付けてはいるんだぜ。
何かあるとすぐおいらが疑われるんだけど、やってもいないことまで疑われちゃうこともある。
例えば、こういうの。
まるでおいらが無理やり花壇に入って荒らしたみたいに見えるだろ。
人間は信じたいことしか信じないから、いくらおいらが「おいらじゃないよ」って言ったって誰も信じてくれないんだ。
母ちゃんは中学3年生の時、照子ちゃんと雅美ちゃんという友達と仲が良かった。
受験も終わってそれぞれの進路が決まった頃、卒業遠足ということでスケート教室が開催されたんだ。
母ちゃんも照子ちゃんも雅美ちゃんもスケート教室を楽しみにしてた。
スケート教室の日の朝は特別に寒かった。
朝起きて顔を洗っていた母ちゃんは、なんだか痒いことに気が付いた。
見てみると、腕に蚊に刺されたような跡があって、掻けば掻くほどその跡は大きく広がっていって、みるみるうちに両腕と両足がブツブツに覆われちゃったんだ。
寒冷蕁麻疹ってやつだ。
母ちゃんは学校に遠足欠席の連絡を入れて病院に行ったんだ。
スケート教室の後3日間が連休になっていて、連休明けにまだ痒い足を擦りながら登校したら・・・
誰も母ちゃんと口をきいてくれないんだ。
同級生だけでなく、担任の先生も母ちゃんと照子ちゃんと雅美ちゃんの3人は存在していないかのように振舞うんだ。
みんなブツブツの子は嫌いなのかなぁ。
でも、照子ちゃんと雅美ちゃんはブツブツはできてない。
実はね、スケート教室の日の朝に照子ちゃんは喘息の発作を起こしたんだ。
それで、スケート教室に行かれなかった。
更に、スケート教室の前日に雅美ちゃんのお婆ちゃんが亡くなって、雅美ちゃんは前日からお通夜とお葬式に出ていて、やっぱりスケート教室を欠席したんだ。
つまり、クラスの仲良し3人組が全員スケート教室に来なかった。
それぞれに止むに止まれぬ事情があってのことだったんだけど、クラスメイトも担任の先生も、3人は揃ってスケート教室をサボって別のところに遊びに行ったって思ったんだ。
母ちゃんはまだブツブツが残る足を見せ、照子ちゃんは処方日が記入された薬袋を見せ、雅美ちゃんはお葬式の式次第を見せて釈明したんだけど、みんなは「そんな偶然があるわけない」の一点張りで誰も信じてくれなかった。
担任の先生なんか、お婆ちゃんを亡くしたばかりの雅美ちゃんに「その日はさぞ楽しかったでしょう」なんて言うんだぜ。
卒業まであと数日だったし、母ちゃんと照子ちゃんと雅美ちゃんは信じてもらうことを諦めた。だから母ちゃんは、1度も中学校の同窓会に行ったことがない。
そんな母ちゃんがおいらのことを疑うのかよ?
おいらは悲しいぜ。
母ちゃんはいつだってタローのこと、信じてるよ。
だから、その体中についてる枯れ葉はなんなのか、母ちゃんに教えてくれるかな?
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