昨日の午後、近所の女の子が血相変えてうちに飛び込んできた。
どうしたのかと話を聞いたら・・・
その子の家では家族各人が持っていた玄関の鍵を、1つ落とし、1つ失くし・・・ってやってるうちに、とうとう全部なくなっちゃった。
だから、家族はみんなガレージから出入りをしているんだ。
その家のガレージには人間が出入りできるドアも付いているんだけど、そのドアの鍵も失くしたら困るだろ。だから、車が出入りするシャッターのナンバーパッドに暗証番号を入力して入るんだ。
その女の子が学校から帰って来て、いつもの通りにガレージから家に入ったんだ。
両親ともに働いているから、家には誰もいない。
お腹が空いた女の子は近所のスーパーにお菓子を買いに行ったんだ。
その時彼女はガレージのシャッターではなく、ドアから出た。
すぐに帰って来るから、彼女はガレージのドアに鍵をかけなかったんだそうだ。
おやつを買って帰って来た彼女がドアを開けようとしたら、ドアが開かない。
鍵がかかっていたんだ。
彼女が買い物に出て帰ってくるまで、その間わずか15分。
誰かが鍵を閉めたんだ。
しかも、内側から。
つまり、中に誰かいる。
この女の子は頭のいい子で、自分がするべきことがちゃんとわかってた。
まず、お父さんとお母さんの携帯に電話をかけた。
どちらも電話を取らない。
家の固定電話にもかけてみた。
やっぱり誰も出ない。
このまま中に入ったら危ないと思った彼女はおいらの家に助けを求めにやって来た。
この辺りで、昼間でも在宅してるのはうちぐらいだからな。
大正解だぞ。
話を聞いたおいらの父ちゃんと母ちゃんはうちの防犯カメラを巻き戻そうとしたんだけど、うちのカメラは狙った時刻から2時間経たないと再生できない。
つまり、あと1時間半待つか?
っていうことで、父ちゃんと母ちゃんはその子と一緒に彼女の家に行ったんだ。
彼女は父ちゃんと母ちゃんの後ろに隠れて、異変があったらすぐに警察に電話するってことにした。
うちには、強盗が押し入ってきた時のために、あちこちにいろんなモノが仕込まれているんだ。
今回、父ちゃんはこれを持って行った。
ガレージのシャッターから中に入ると・・・
呆然とした父ちゃんが言った。
これは相当荒らされてるぞ。
すぐ、警察に電話してくれ!
机の上にも床にもばら撒かれた書類や郵便物。
どれが洗ったもので、どれが洗ってないのか、無軌道に散らばる衣類。
シンクに滅茶苦茶に積み重なっている鍋釜食器類。
とにかく凄まじいんだ。
女の子が父ちゃんの目線の先を見て不思議そうに言った。
何も変わってないけど。
あらやだ、気まずい。
何か・・・逆にごめんね。
なんで開けていったドアの鍵が閉まっていたのかはわからなかったんだけど、とりあえず、家の中に変な人はいないということを確認して、何かあればまたすぐにうちに連絡してねって言い残して、父ちゃんと母ちゃんはそそくさと帰って来たんだ。
あの子はおいらの父ちゃんと母ちゃんのことを両親にどう説明したんだろうな?
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