あすなろタロー　ただいま修行中: ご近所づきあい

今日は朝からどんよりと曇っていて、いつ雨が降ってもおかしくない空模様。
通常おいらは朝父ちゃんと走って、午後母ちゃんとドッグランで遊ぶんだけど、今日は2回のエクササイズは難しそうだから、雨が降らないうちに3人でちょっと長めのランニングをすることにしたんだ。

ランニングの後にはドッグランでボール遊びをする。
ボール遊びって言ったって、おいらのはハンティングに近い。
父ちゃんが投げたボールが地面に着く前においらがキャッチできればおいらの勝ち。
ボールが地面でバウンドしちゃうと、父ちゃんの勝ち。
これを50投球くらいやって、おいらも父ちゃんも母ちゃんもヘロヘロ。

3人で歩く帰り道はおいらにとっては最高の時間。
これで家に帰ったら大好物の人参が待っている。

おいらの家まであと10mのところで、ご近所のスーキーさんに会った。
スーキーさんは威勢のいいおばさんで、思ったことを何でも言っちゃう人だから、ご近所からちょっとだけ煙たがられている。

いつになく愛想のいいスーキーさんが話しかけてきた。

この木の枝はどの辺りで切ったらいいかしら？

地面から1m以下に生えてきた小枝は全部剪断して、上部は目の高さで切りそろえるといいよ。
って父ちゃんが教えてあげた。
スーキーさんが持っていた道具は、ちょっと心許なかったから、父ちゃんが家から道具を持って来て切ってあげることにしたんだ。

スーキーさんはとても喜んだ。
実は毎年この家の木々の手入れは、スーキーさんのお父さんがやってくれていたんだけど、昨年亡くなってしまったんだって。
以来、庭をどうしたらいいか途方に暮れていたんだ。

確かに庭は荒れていたし、女性に力仕事をさせることをよしとしない父ちゃんは、他の木も剪断してあげたんだ。
父ちゃんの庭仕事は丁寧で速い。
ずんずん捗っていく庭を見て、スーキーさんはちょっと調子に乗ってきて

裏の庭もお願いね！

10分で終わるはずのつもりが、気がつけば2時間経っていた。

去年の春、父ちゃんはCodyのおうちの畑に藤棚を作ってあげたんだ。
その藤棚はスーキーさんの家との境目に位置するんだけど、あとちょっとで完成という時にスーキーさんが文句を言ってきた。
藤棚は完全にCodyの庭の塀の内側にあるんだけど、スーキーさんの家から見えないようにしてほしいって言われたんだ。
別に景観を邪魔しているわけでもないんだけど、機嫌が悪かったんだろうな。
Codyの父ちゃんは二晩スーキーさんと話し合って藤棚を10cm低くすることで折り合いをつけた。
で、おいらの父ちゃんはせっかく作った藤棚を10cm低くするために、作業をほぼ1からやり直したんだ。
この一件以来、Codyのおうちもスーキーさんとちょっと距離を置くようになったんだ。

父ちゃんがスーキーさんの木々の剪断をしていると、Codyの声が聞こえた。
おいらの父ちゃんと母ちゃんの声がしたから、びっくりしたんだろうな。

Codyはいつだって吠えてばっかり！

スーキーさんが嫌そうに言ってた。

おいらのお隣さんは、おいらがいると防犯に役立って助かるよって言ってくれる。
おいらは幸せなんだな。

犬は鳴くのが仕事だから、防犯にも役立つんじゃない？

って母ちゃんが言ったら、スーキーさんは返事をしなかった。

おいらの父ちゃんはお人好しだから、ご近所に頼まれれば何でもしてあげちゃう。
けど、今日は帰ってから深いため息ついてたな。