おいらの父ちゃんは上海で生まれた。
父ちゃんが子供の頃の中国は、みんなが食べる物に困っていた。
父ちゃんの父ちゃんは大学教授だったんだけど、一家7人がやっと食べて行けるかどうかという生活をしていたんだ。
そんな時、まだ小さかった父ちゃんが子犬を拾ってきちゃったんだ><
父ちゃんと子犬は毎日兄弟のように遊び、父ちゃんは自分の分のご飯をこそっと隠して子犬にあげて、自分ではご飯を食べなくなっちゃったんだ。
子供の頃の父ちゃんは体が弱くて、父ちゃんの両親はそんな父ちゃんの体を心配して、とうとう子犬を知り合いにあげちゃったんだって。
子犬がいなくなって狂ったように探し回る父ちゃん。
父ちゃんの両親は、「どうせ、そのうち忘れるさ。子供だから。」って思ってたんだけど、来る日も来る日も子犬を探し回る父ちゃんにとうとう言ったんだ。
「うちには犬を食べさせるだけの余裕がない。だから、たくさんご飯を食べさせてくれる人に貰ってもらったんだよ。」
その話を聞いて父ちゃんは、辛いけどその方が犬のためだって思って諦めた。
ところが、しばらくたったある日、風の噂でその犬が亡くなったことを聞きつけたんだ。
そこから父ちゃんは暫く呆けた状態になり
そんな父ちゃんだから、犬と生活することが人生の夢の1つだったんだけど、その後中国は文化大革命という大きな時代の変動期に入り、犬なんか飼った日にはブルジョワ思想の反革命分子として糾弾されちゃう暗い暗い時代に入っていったんだ。
文化大革命は搾取層の資本家たちを糾弾するという名目の政策だったんだけど、次第にその対象が知識層へと波及して、小学校から大学まで、学校の先生たちはこぞって糾弾されいったんだ。
父ちゃんの父ちゃんもその1人で、家族全員が相当な苦労を強いられて生活していたんだ。そのせいなんだろうな。
文化大革命後、父ちゃんの兄弟たちは全員国外に出て行っちゃったんだ。
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若い時に留学生として来日した父ちゃんは、懸命に勉強し、懸命に仕事した。
ある程度生活ができるようになっても、犬を飼う時間的余裕なんかなくて、夢は夢で終わるのかと思っていた時に、中国で出会った犬をレスキューしてやっと夢を叶えたんだ。
もう、父ちゃんの人生の折り返し地点を過ぎた頃だった。
その子は中国から日本、日本からカナダへと父ちゃんについて行き、天寿を全うしてカナダから虹の橋を渡っていったんだ。
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それから約1年後、おいらが父ちゃんの息子2代目になってやったんだ。
父ちゃんは犬を飼うという夢を、人生の中で2度も叶えることができたんだな。
自分より顔のデカい息子ってどーよ?
父ちゃんは毎朝おいらと散歩しながら自分の人生を振り返る。
家族がいて、おいらがいて、毎日ちゃんと食べられる生活を時々不思議に思う。
実はこれは全部夢で、覚めたらまた文化大革命の時代に戻っていたなんてことになったらどうしよう・・・って不安になることもあるらしい。
そういう時、父ちゃんはおいらをぎゅっと抱きしめるんだ。
心配するな、父ちゃん。
夢から覚めても、おいらは父ちゃんの傍にいるからな。
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