2017年6月6日火曜日

母ちゃんの親友 野生動物にしてあげられること


おいらの母ちゃんには『あらい くまこ』というお友達がいた。
母ちゃんは、血を吐くような心の苦しみに襲われていた時に助けてくれたくまこにとても感謝していて、何か恩返しがしたいといつも思ってる。
おいらがやきもち焼くくらい、母ちゃんはくまこが好きなんだ。

→ ごめんね、くまこ

恩人であり、大親友だったくまこ。
そんなくまこにもう1年以上会ってないことが、母ちゃんは気になって気になって仕方ないんだ。



人間はよく「できることがあったら言ってね。」って言うだろ?
母ちゃんもくまこにそう言ったんだ。
それは母ちゃんの本心だったんだけど、くまこが母ちゃんに託したお願いは、母ちゃんの出来ることを越えていたんだ。

おいらがこの家に来る前のこと。
くまこは自分の子どものちびこをおいらの家の中に押し込めようとしたんだ。
つまり、母ちゃんにちびこを育ててほしいという、くまこのお願いだったと思うんだ。
そんなことあるのか?って思うだろ?
あるんだよ。
野生動物のくまこは元々自分から母ちゃんに寄ってきた。
母ちゃんの心の傷を察知したんだな。
それからずっと母ちゃんに寄り添ってくれたんだ。
自分の子どもたちも母ちゃんに見せてくれて、たった1匹だけになっちゃったちびこを母ちゃんに差し出した。



母ちゃんはすごく葛藤したんだ。
くまこの気持ちは痛いほどわかる。
でも、野生動物を飼うことはできない。
飼っても人間も動物も幸せにはなれない。
くまこは母ちゃんの傷を癒してくれたのに、母ちゃんはくまこの望みを叶えてあげられない。
その後、おいらが母ちゃんの息子になった。
くまこは相当傷ついたと思うんだ。
以来、くまこは姿を見せなくなった。

野生のアライグマの寿命は3年前後。
母ちゃんがくまこに出会ったのが2年前。
その時既にくまこは若いとは言えない年齢だったみたいだ。
まだ、生きててくれてるかな?って今も母ちゃんは思う。
人間が野生動物にしてやれることなんて、放っておいてあげることしかない。
それはわかっているんだけど、母ちゃんはくまこに何かしてあげたいと思ってる。
せめて、ありがとう、ごめんねって伝えたいと思っているんだ。






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