おいらの前の犬がカナダに来て半年が過ぎた頃、誰かがうちのドアをノックしたんだ。
母ちゃんがちょうどその犬と散歩に出掛けようとしていた時だった。
誰かしら?と思った母ちゃんがドアを開けたら、SPCAの職員が3人、有無を言わさず家に入ってきて、犬を母ちゃんから引き離したんだ。
その時の母ちゃんはSPCAの存在さえ知らなかったから、まじビビッたんだそうだ。
職員の1人が母ちゃんに言ったんだ。
通報がありました。
あなたには動物虐待の嫌疑がかかっています。
母ちゃんには何のことだかわからない。
母ちゃんはどんな悪事を働いたって、動物虐待だけはしない自信があったんだ。
けど、
そんなことしてません。
なんて、容疑者の自己申告が通用するはずもない。
いろんな質問をされて、母ちゃんは全部正直に答えた。
ご飯は何時に、どこで、何を、どれくらい食べさせているか
どこで寝せているか
そんな質問しては実際に見て回った。
ワクチンの履歴や獣医の受診歴の提示も要求されるし、かかりつけの獣医にはその場で電話される。
当然虐待につながることは何も出てこない。
すると、職員の1人が母ちゃんに言ったんだ。
犬の頭の上に手を挙げてみてください。
母ちゃんが犬の頭に手をかざした。
犬は何かもらえるのかという表情で、母ちゃんの手をきょとんと見てる。
これが、虐待の疑いを否定する大きな決め手になったんだ。
もし、本当に虐待を受けている犬だったら、母ちゃんの手を怖がって首を縮めて避けるだろ?
職員が教えてくれた。
毎日夕方5時になると、お宅から犬の悲鳴が聞こえるという通報がありました。
お宅の家の前で待っていると、確かに犬の悲鳴が聞こえました。
心当たりはありませんか?
母ちゃんには心当たりが大いにあった。
私がこれから犬に日本語で「散歩に行こう」と言いますから、その時のこの犬の反応を見ていただけますか?
母ちゃんはそう言って、犬に優しく話しかけた。
お散歩に行こうか?
嬉しくてたまらない犬が発する声がこんな感じ。
おきゃー!💕💕💞💕💕キャインキャインキャイン👻👻👻
うっきょっきょっきょっきょっ💫💫💫
ふぎゃん、ふぎゃん、ふぎゃん
ぎゃんぎゃんぎゃんぎゃんぎやー💨💨💨
尻尾をくるくる回しながら奇声を発する犬を見て、SPCAの職員は大笑い。
そこで間髪入れずに母ちゃんが
ごめん、上着取ってくるね。
喜んだ犬は一転癇癪を起して
うぎゃー!ぎゃうん、ぎゃうん、ぎゃうん💣💥💢
うーるるるるるー
キャインキャインキャーーーーーン👽👽👽
誰が聞いても折檻されている声。
でもこれが、その犬の自然な姿だから仕方ない。
規定によって通報者の名前は言えませんが、気を悪くしないでください。
大変失礼しました。
そう言って、職員が書類にサインを求めたんだ。
疑いが晴れればそれでいい母ちゃんが言った。
誰が通報したかなんてどうでもいいこと。
ご近所の皆さんがうちの犬を大事に思ってくれているということを知って、逆に嬉しく思いました。
とまあ、最後はめでたしめでたしだったんだけど、あの時その子が首を縮めたら、母ちゃんはエライ目に遭ってたんだろうな。
当然、おいらもここにはいない。
危ないところだったぜ。ふぅー。
カナダは犬も子どもも社会が育てるというコミュニティ意識が強い国なんだ。
他所の子どもが間違ったことをしたら、他人でも叱る。
子育てやペットのしつけに困っている人がいれば、わかっている人が積極的に手も口も出して助けてあげる。
子どもやペットに酷いことをすれば、即通報される。
カナダは個人主義で自己責任を前提とする社会だけれど、それは他人を尊重するということであって、決して他人のことに無関心ということではないんだ。
個人主義というお題目を理由にして、社会の問題から逃げないんだよな。
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